保育士の離職率を改善に導いたUnipos活用、感謝と称賛の組織文化を作る方法とはのアイキャッチ画像

株式会社ハイフライヤーズ

利用人数
170名
利用開始
2019年12月導入
業種
認可保育施設
企業理念
『人とのつながり』を大切に、『また明日も来たい』保育園
URL
https://highflyers.co.jp/

千葉県内で認可保育施設キートスチャイルドケア、キートスベビーケアを運営するハイフライヤーズ。2010年の創業以来、急成長を続ける同社ですが、ずっと順風満帆だったわけではないといいます。2018年から2019年にかけて、保育士の離職率が34%にまで上がり、自治体から改善勧告を受けるなど窮地に立たされてしまいました。そんな事態を改善するために、同社はUniposを導入。結果として離職率の改善だけでなく、様々な好影響が表れたといいます。

同社はUniposをどのように導入・運用し、それほどの成果を上げるに至ったのでしょうか。Unipos活用のポイントについて、保育運営本部 本部長 キートス統括園長 日向美奈子 様、事業企画本部 本部長 吉田りえ 様、カスタマーサポートセンター センター長 栁下理砂 様、事業企画本部 広報部 部長 石井渚 様にうかがいました。

課題と効果

業界でもトップクラスの高待遇にも関わらず、離職率が高かった

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給与も福利厚生も業界トップクラスなのに人が辞めてしまう

日向:当社は2010年創業後、年より千葉県内で認可保育施設のキートスチャイルドケア、キートスベビーケアを運営しております。現在、キートスチャイルドケアは13園あり、170名近くの社員が働いています。

ただ、ずっと順調だったわけではありません。実は、少し前まで、当社は離職率の高さに悩んでいた時期がありました。2018年10月~2019年9月の1年間の離職率は34.7%にもなっており、一時は自治体から改善勧告という厳しい指導を受けておりました。せっかく入社しても、数ヶ月で辞めてしまう保育士が多かったのです。

なぜ離職率が上がってしまうのか。当時はずいぶん悩みました。というのも、当社の給料や福利厚生は業界でもトップクラスですし、人間関係も決して悪くなかったのです。にも関わらず、どうして人が辞めてしまうのか。いろいろと考えた結果、社員はもっと「認められたい」のではないかと思ったのです。

そこで、始めたのが表彰制度でした。各園から保育士のMVPを選出して、会社として表彰するという取り組みです。ところが、これもうまくいかなかったのです。表彰した社員が、その直後に辞めてしまうという出来事もあり、再び考え直す必要に迫られました。

そんなときに、たまたま広告で知ったのがUniposでした。Uniposの仕組みを知ったとき、「これだ!」と思いました。

必要なのは会社からの一方的な称賛ではなく社員同士での感謝だった

日向:表彰制度はいわば「会社からの称賛」です。MVPに選ばれたといっても、社員によっては「本当に?」「何か忖度があったのでは?」と懐疑的に捉えられてしまう可能性があります。SNS世代の社員にとって大事なのは、「横のつながりがある誰かが認めてくれること」であり、「嘘のない“いいね”」であると気づいたのです。

実はUniposを導入する前に、「いいねカード」という取り組みを試していました。小さなカードに「ありがとう」のメッセージを書いて社員同士で贈り合うという施策です。これは横のつながりという点では優れた施策で評判もよかったのですが、アナログなのでなかなか数値化やデータ化はできません。

この「いいねカード」をデジタルにできないか……という思いを持っていたこともあり、Uniposはまさにぴったりだと感じました。

「いいねカード」施策の写真
▲社員同士が感謝を伝え合う「いいねカード」施策も実施

SNS感覚で利用し「Unipos有給休暇」を取り入れ利用率96%を達成

「ありがとう」を大切にする「キートス」とUniposに共通する理念が後押し

日向:Uniposでおくり合う「ありがとう」の気持ちは、謙虚な心がなくては感じることができません。どんなに小さなことでもいいので、「ありがとう」を周りの人たちに伝え合うこと。それがやがて会社の目指す「明日も来たい保育園」を創ることにつながるというメッセージを全社員に伝えました。

導入については、全員が賛成してくれました。実は、当社が運営する保育園「キートス(Kiitos)」はフィンランド語で「ありがとう」という意味です。その名の通り、私たちはもともと「ありがとう」を伝えることを一番大事にしています。感謝を伝えるUniposとは理念が共通していることも大きかったかもしれませんね。

“やらされる”のではなく、SNS感覚で気軽に送り合うことで利用率を維持・向上

日向:Uniposは非常にスムーズに浸透していったと感じています。たとえば2021年4月の1人あたりの1ヶ月の平均投稿回数は35.4回です。先輩社員に比べると新入社員はやや低めですが、5月になると先輩社員と新入社員の差はほとんどなくなっていることがわかりました。入社から1ヶ月で、新入社員にもUniposがしっかりと浸透していることがデータから読み取れます。利用率は高い月だと96%にも達しており、ログインなど何らかのアクションをとったアクティブユーザーはほぼ100%に上ります。この結果を見て、あらためて「自然発生する“ありがとう”」の価値を実感しました。

社員はUniposを“やらされている”のではなく、SNS感覚で気軽におくり合っています。通勤時間や仕事終わりの落ち着いた時間など、社員が「おくりたい」と思った時間におくっているため、忙しさから利用が下がるということはないですね。むしろ、休日にUniposが飛び交うことも少なくありません。

ユニポス有給休暇の導入や表彰制度などのユニークな施策で利用定着

日向:月に1回の表彰(アクティブレポート)とUnipos有給休暇対象者の発表をしております。Unipos有給休暇とは、1ヶ月にUniposを30投稿以上すると翌月に有給休暇を1日もらえるという制度です。

ユニポスレポートの発表と、ユニポス有給休暇制度について周知された周知の画像
▲ユニポスレポートの発表と、ユニポス有給休暇制度について周知された周知
ユニポスレポートの画像
ユニポスレポートの画像
▲実際に発表されるユニポスレポートの一部

自社ごとに生成されるポジティブレポートはこちら。ログインした状態でご覧ください。
※Enterpriseプランご加入の方のみ

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新入社員の最初の仕事はUniposを送ること。「ありがとう」からコミュニケーションが始まるメリット

石井:研修を終えた新入社員はそれぞれの園に配属になりますが、その時点では何をすればいいかわからない状態です。入社して配属になったばかりなのですから、これは当然のことです。

そこで当社では、新入社員の最初の仕事を「Uniposを送ること」にしています。会社のためになるなんてことは最初は考えなくていいので、まずは周りの人に感謝し、その気持ちをUniposで伝えることが大事なんだよ、と説明しています。そうやって周りの人に感謝すると社会人として“謙虚な気持ち”が生まれるんです。また、先輩社員についても、「新入社員に対して、指示や指導するよりも先に、Uniposを送りましょう」と伝えています。

新入社員に周知された初仕事「ありがとうを伝えること」と「Uniposのススメ」の画像その一
新入社員に周知された初仕事「ありがとうを伝えること」と「Uniposのススメ」の画像その二
▲新入社員に周知された初仕事「ありがとうを伝えること」と「Uniposのススメ」

すると、何が起きるかというと、最初のコミュニケーションが「ありがとう」から始まることになるんです。「ありがとう」と言われて、敵意を持つ人はいませんよね。新入社員は、いずれ仕事の中で先輩社員からダメ出しや指導されることも出てくるでしょう。でも、Uniposからコミュニケーションが始まっていることで、指導される側も謙虚な気持ちで受け入れることができるし、指導する側も柔らかく優しい気持ちで伝えられるのです。

「ありがとう」が新入社員の初めてのコミュニケーションの画像その一
「ありがとう」が新入社員の初めてのコミュニケーションの画像その二
▲「ありがとう」が新入社員の初めてのコミュニケーション

マネジメント層は特定の部下に投稿が偏らないよう意識、社員の心理状態が見えるメリットも

日向:上司から部下に送る場合は、特定の人にばかり投稿が偏ったりしないよう意識しています。というのも、上司からのUniposは評価につながると思われる場合があるからです。

その結果、同僚同士のUniposとは違った意味で、承認欲求を満たすことにつながっていると感じられます。また、社員のモチベーションや心理状態がメッセージから読み取れるのもマネジメント層にとってのメリットです。仕事に対してモチベーションが下がってきた場合、投稿数が減ることがあります。マネジメント層はUniposには毎日目を通し、「Uniposのメッセージ読んだんだけど、今心配事や不安なことがあるのかな?」などと声をかけてみたり、場合によっては面談をしたりすることもあります。

保護者の声をUniposで共有、社員のモチベーションアップに

栁下:もう1つの活用法は、保護者の声を社員に共有してモチベーションアップにつなげるというものです。昨年、コロナ禍で登園自粛要請などもあり、お子さんが園に通えない状況がありました。そうした中で、私たちにできることをしたいという思いから、保護者の方向けの相談窓口を作ったのです。

現在ではこの窓口が拡大し、カスタマーサポートセンターとして活動しています。保護者だけでなく、地域の方や行政も含め、キートスに関わる全ての方々を「顧客」と捉え、その誰もが安心、安全、笑顔で子どもを見守ることができるようにとの思いで名称を変更しました。保護者の方だけでなく、妊婦さんなども対象に相談を受けています。

カスタマーサポートセンターは園を通さず直接保護者と関わることが多い部署であり、各園に関する様々な声が寄せられます。本来、その園にいなければわからなかったようなエピソードや、保護者の方からの感謝のメッセージなどが届くので、それらの声をUniposを通して発信、共有しています。保護者の方から感謝を受けるのも嬉しいことですが、Uniposを通して「◯◯先生ありがとうと言っていたよ」と、全社員の見える場所で発信されることで承認欲求が満たされモチベーションアップにつながるメリットもあります。人は、自分のいないところで感謝されていることを知ると、直接伝えてもらう以上に嬉しいものですからね。

お客様のお褒めの言葉を聞いた社員が、Uniposで本人に共有の画像その一
お客様のお褒めの言葉を聞いた社員が、Uniposで本人に共有の画像その二
お客様のお褒めの言葉を聞いた社員が、Uniposで本人に共有の画像その三
▲お客様のお褒めの言葉を聞いた社員が、Uniposで本人に共有

まずは1日1投稿を「仕事」に。ポイント換金などのメリットもアピール

日向:まずは導入して、1日1投稿を社員の大事な「仕事」とすれば、自然とその効果を目の当たりにできるはずです。ポイント換金も魅力的です。

日常的にやりとりされる素敵な投稿の画像
▲日常的にやりとりされる素敵な投稿の一例

効果

「Uniposでまさかの再会」感動のエピソードも

日向:Uniposの投稿を見ていて知った感動的なエピソードをご紹介します。
昨年入社した社員がUniposの投稿を見て「自分が幼少期に通っていた保育園の先生がキートスに勤務している!」と気づき、約20年ぶりに再会するということがありました。

姉妹園同士での勤務でしたが、Uniposにより社内全員の投稿やプロフィール、写真が見られるからこそ、20年たった今でもお互いに気づくことができたのだそうです。話を聞くと、「そのときの先生たちが優しくて保育園がとても楽しかったから、自分もそんな保育者になりたくてこの仕事を志した」とのこと。2人は再会できたことを励みに、その後もそれぞれが姉妹園で勤務を続けています。

20年ぶりに再会したお子さん=現在の保育士へおくられたUniposの画像
▲20年ぶりに再会したお子さん=現在の保育士へおくられたUnipos
再会を喜ぶ投稿の画像
▲再会を喜ぶ投稿「先生の保育は自分の保育の根幹」と、素敵なコメントです…。

離職率が大幅に改善、売上も前年比で7%増加

日向:Uniposを用いた制度導入の効果については、なんといっても社員の離職率が大きく減少したということです。先ほど、一時は離職率が34.7%まで上がり自治体から改善指導を受けたというお話をしましたが、その後、改善努力により15.1%まで下がりました。Uniposを導入したのはこのタイミングです。Uniposを導入してからはさらに退職が減り続け、現在では離職率10.4%を実現しました。

また、離職率が下がり、社員のモチベーションが上がったことはサービスの向上にも大きな効果をもたらしています。コロナ禍にも関わらず入園希望者が増え、売上が前年比で7%増加しました。

先生同士支え合って、お子様と保護者と向き合う姿がうかがえる投稿画像その一
先生同士支え合って、お子様と保護者と向き合う姿がうかがえる投稿画像その二
先生同士支え合って、お子様と保護者と向き合う姿がうかがえる投稿画像その三
▲先生同士支え合って、お子様と保護者と向き合う姿がうかがえる投稿がいくつも見られます

Uniposからヒントを得た施策も実施。保護者との距離も近づく

日向:Uniposは売上に直接的な効果をもたらすソリューションではありませんが、間接的な効果が非常に高いと感じています。売上を上げるためには高水準のサービスを提供しなければなりません。そして、高水準のサービスを生むには、社員が高いモチベーションを持って働ける環境が必要です。Uniposはこの環境づくりに大きく貢献してくれています。

吉田:実はUniposからヒントを得て、新たに始めた施策もあるんです。それが「キートス利用者の声」です。保護者の方からいただくたくさんの声や要望について、自社のWebサイトで専用のページを設け、「できました!」「改善します」「検討します」というカテゴリに分けて改善内容をレポートすることにしたのです。その結果、保護者の方からは「要望が多くて大変そうなので、ぜひお礼も伝えたい」というお声をちょうだいし、「ありがとう」のスペースも設けることになりました。

石井:Uniposによる心理的安全性の高まりは多くの好影響をもたらしてくれています。入社して1ヶ月の新入社員からも活発に意見が出るようになり、仕事への意欲が高まった結果、広報部に参加したいという社員も増加しました。

保護者の要望で「ありがとう」コーナーが生まれるきっかけになったメッセージの画像
▲保護者の要望で「ありがとう」コーナーが生まれるきっかけになったメッセージ

最後に

ロイヤリティとエンゲージメントの正しいあり方とは

日向:表彰制度がうまくいかず、Uniposを導入し、効果を得られたことで、ロイヤリティとエンゲージメントについて考えさせられました。

ロイヤリティとは忠誠心のことで、昔は社員が会社に対してロイヤリティを持つという考え方が一般的でした。しかし、当社ではこの会社で働いてくれてありがとう、という気持ちを社員に対してしっかりと伝えることが大切だと考えています。

一方でエンゲージメントは愛着や思い入れのことで、社員同士で生まれるべきものです。会社が社員にロイヤリティを与え、社員同士はエンゲージメントで結ばれる。この状態を作るのに、経営層と社員、そして社員同士で感謝や称賛を送れるUniposは最適なソリューションといえます。

あとがき

取材で訪れたハイフライヤーズ様のオフィスにて、社員の皆様にもご挨拶させていただきました。皆さん、とても笑顔が素敵で、生き生きと働いていらっしゃることが伝わってきました。

また、Uniposを通して教え子の方と再会されたという先生と、その教え子の方にもお会いすることができ、Uniposが紡いだ絆に感動しました。

保育士は、大切なお子様の命を預かる責任重大なお仕事です。だからこそ保育士の皆様が高いモチベーションを持って長く働ける環境づくりに苦心しやっとの思いで実現されたハイフライヤーズ様。今後も強い絆で結ばれた職場であり続けることと思います。